色筆の記録

物好き?

内なるΨ難?

 

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原作:斉木楠雄のΨ難


 僕は斉木楠雄。生まれついての超能力者だ。

 超能力と聞くと、どうしても便利だと想像しがちだがとんでもない。幼少からこの力に振り回されている身としては、「否」としか思えないのだ。

 たとえば、石化能力。裸眼で視た相手をきっかり一日石化させてしまう恐ろしいものだ。しかも常に発動している。テレパシーもだが、常に発動し続けている能力に至っては解除自体ができない。

 頭に二つつけたアンテナみたいな制御装置も、一つ取るだけで能力の加減が難しくなる。何なら年々力そのものが強まっているくらいだ。

 

 そんな訳で、しばしば自分の能力を試す必要がある。

 普段なら衛星画像等に細工をしてから、荒野の岩山のような誰もいないか見てない場で身体能力を確かめたりするが、今回は室内でも可能な実験だ。

 分身(バイロケーション)。僕の分身を生成する能力だ。制御装置を外した状態でも一人しか出せないし、分身は本体と同じ力を使えるが容姿と性格は微妙に変わる。 

 分身が更に分身を生み出すのは可能だが、繰り返すにつれてどんどん姿、性格、嗜好が毎回バラバラになり、制御が効かなくなる。僕らしいピーキーな能力の一つだ。

 今回は自分の部屋で分身をどこまで出せるか試してみる。以前は三十七体までだった。今は四十体を超えたあたりだ。

「楠雄~、ちょっといいか?」

 ん?どうやら父さんが副業をしたいらしい。いつものトンチキ発言だが聞いておこう。

「父さんな、副業で靴磨きをしようと思うんだ」

 まず出版社の編集者が副業して大丈夫か?

「あくまで社内限定って条件で許可貰えたんだよ」

 それで良いのか終焉社……。父さんの記憶とイメージを覗いたら、重役も嫌悪している訳ではないようだが………まあ、うん、そりゃ奇特な目で見られるよな。

「って、また分身出したの?」

 ああ。時間がある時にやろうと思いながらも、最近試していなかったからな。

 

 何だかんだ父さんと会話を終えて、部屋で実験を再開しようとした時だった。

 僕の耳に甲高い嫌な羽音が入ってくる。蚊だ。姿はまだ見えないが。

「お、見っけ」

 すぐに画風の違う分身がサイコキネシスで仕留める。

「そろそろ良い焼け具合じゃない?」

 僕を女体化させたような姿の分身__斉木栗子は、厳つい半魚人型の分身に話しかけていた。どんな姿か想像しにくい人のため補足すると、漫画やアニメにも登場したあの青紫色の彼だ。

 半魚人型は、鶏肉を発火能力(パイロキネシス)で適度に炙っているようだ。四十人超えの大所帯となれば当然部屋も狭くなるため、宙に浮かせながら作業していた。絶対に天井焦がすなよ。ところで今焼いている肉は、わざわざ冷蔵庫から持ってきたのか?

 恰幅の良さげな分身は意外にも興味なさそうだ。

 ただのおじいちゃんにしか見えない者、モヒカン頭の者、若干やつれ気味の顔の者、幼少期の僕みたいな者、隙間女みたいな者等、他の分身達を見れば皆ボーッとしているか駄弁っていた。自分で言うのも変だが、こうして召喚してみると中々現実離れした光景だと本気で思う。

 ん?おかしいな、分身が一人足りない。一体どこに行った?

「ついさっき外に出た」

 三十七体目の液体人間型と弁髪の武術家型の分身が開いた窓を指差す。今言う情報じゃないが、彼等も原作に出ていたぞ。

 咄嗟に窓から消えた分身が何処にいるか確認した。その分身は透明化の能力で、人目を気にするかのように家の庭でジッとしていた。だがどうも嫌な予感がする。

 参ったな……。記憶が間違ってなければ、あいつは確か四十体目以降に生み出した分身だ。三十七体目を更にドロドロにした風貌だからすぐわかった。

 最初に述べたように、分身は複製すればする程制御が効きにくくなる。以前、とある噴火を防ぐため分身を召喚した時も、肝心なところで一人の制御が効かなくなった。

 だが、僕が危惧しているのは、いずれ分身の中に本体である僕を上書きする、もしくは完全に独立する者が現れかねない点だ。

 今回の複製実験は、その辺の細かい条件を調べるためでもあったが、どうやら裏目に出てしまったらしい……。

「ど、どうしよ。知らないとこに来ちゃった……」

 さ、最悪だ。まさかこの状況で鈴宮さんが我が家の前に来るとは……。

 いや、テレパシーで近所にいるのは知っていた。しかし、ここまで僕に接近してしまったのもおそらく彼女の体質、不運の影響だろう。

「不運(アンラック)か。癖は強いが、自爆以外にも使い道がありそうだな……」

 静観していた四十体以降の分身が小さく独り言を漏らす。流石に「四十体以降」のままだと呼びにくいので、内敵、いや「イド(Id)の分身」と呼ぼうか。

 イドは心理学だか精神分析だかで、人間の本能とか無意識とかを指す言葉だったはず。詳しくは各々調べてくれ。僕は兄(空助)と違い学者じゃあない。

 理由は不明だが、イドの分身は鈴宮さんに目をつけているようだ。何をする気だ?

 僕は目的を探るべく、分身に向けテレパシーに意識を集中させた。

(鈴宮陽衣の超能力じみたあの体質を利用すれば、俺が本体から分離できるやもしれない。試す価値はあるはず。お、流石に本体も俺の狙いに気付いたか)

 僕の考えを覗いたイドがこちらをチラリと見たが、再び視線を鈴宮さんに戻す。手荒な真似はしないようだが、黙って静観しとけってか?

 そろそろまずいな。明らかにこいつは策を練って僕の制御下から抜け出そうとしている。その算段が成功するかはともかくとして。

(そういやこの街、結構超能力者がいたよな。燃堂や灰呂、明智とかも片足突っ込んでるし、鳥束や照橋は言うまでもないが)

 イドは他にも目をつけていたらしく、僕に馴染みのある名前を思い浮かべていた。

 僕には皆の力で分離できるとは考えられないが。それか人質にでもするつもりか。

「お、おい。あれ止めないとヤバいんじゃ……」

 栗子こと一体目の分身の指摘通りだ。無論、既に対策は考えてある。問題はこの案が、どこまでイドに読まれているか把握しにくい点だ。ここはもう賭けるしかない。

 僕が何をするのかイドもテレパシーでわかったらしく、明らかに反応が変わった。逃げる気だ。

(!一旦、タイムリープなり距離を取っ__)

 させる訳ないだろう。

 あらかじめ眼鏡を外していた僕は裸眼でイドを視認した。良かった。石化能力はあいつにもちゃんと通る。

 不幸にも、イドの分身は石化してしまい、サイコキネシスで粉々に砕かれそのまま消滅した。

 何となくだが、僕にはイドが自らの黒い面や膿を凝縮した存在のように思えた。今回はイドの狙いが破壊ではないのに加えて短時間で解決したから良かったが、もしあいつが初めからマインドコントロールや地球への復元能力でも乱発してたらどうなっていたやら……。想像したくもない。

 思えば、分身を数えるまでいなくなったのに気が付かなかったのは、幻覚か催眠能力で僕の目を欺いていたのだろう。我ながら恐ろしい力だ。

 その後鈴宮さんは、見覚えのある道に辿り着いて何とか事なきを得たのを千里眼で確認した。もしやイドが起こるはずの不幸の大半を、結果的に肩代わりしていたのか?いや、まさかな……。

 まあ、彼女の不幸体質を利用したとて、どのみち僕の分身である絶対的事実から逃れられなかった訳だ。僕としても、これ以上身近に厄介者を増やしたくない。

 現にここの作者も才虎、燃堂、明智達のような問題児の扱いにはかなり困っているらしいからな。

終


 

斉木栗子(分身)

一体目の分身。女体化しても顔は本体と若干違うが、後日照橋達に妹として紹介しても問題なかった。

 

四十体目以降の分身こと「イドの分身」

楠雄から分離しようとする性格と、三十七体目をより液状にしたような容姿が特徴。楠雄も指摘してたが、こいつがのっけからマインドコントロールやタイムリープ等を乱用してたら詰んでた可能性がある。

鈴宮の体質と制御が効かなくなった弊害か、思考があまり共有できないため何番目かは不明。

また、本来は一瞬で消せるはずが上記と同じ理由に加え、鈴宮の超能力じみた不運体質により消すのに時間がかかった。

声は二代目ニャンちゅうやヒロアカの心操役の人を想像してる。


 

おまけ(多作品ネタなので苦手な人は読まなくていいです)

 

 おい。確かに分身は基本ランダムだし、題名にも「Ψ」(プサイ)はあるが、だからって本当に喚(よ)ぶやつがあるか。

 バンダイと東■にも本気で怒られるかもしれないだろ。

 僕は、顔面にでかでかと青い「Ψ」の文字が赤紫の複眼と共にあり、ジェットパックと妙な腕時計を着けた白を基調とした軽装の鎧の分身を見て、他の分身達と共にしばらく呆然としていた。

 ここに遊太くんがいたら興奮するだろうか……。

祝!「トランスフォーマー ザ・ムービー」日本本格初公開

ローソン傘下の劇場のみですが、四十年越しに「トランスフォーマー ザ・ムービー」が本格的に初上映されるのが決定しました。

無茶振りですが、このままレンタルビデオ店でも借りられるようになりませんかね。

 

とある報せと2026年夏に視聴したアニメ他感想と少し小言

今年8月28日、実写版含めたいくつもの作品で原語版コンボイ(オプティマスプライム)の声を担当されていたピーター・カレン氏が逝去されました。

不躾(ぶしつけ)かもしれませんが、この場をお借りしてご冥福をお祈りします。

「夜空を見上げる時、輝く星の一つを私の魂だと思ってくれ」(「ロストエイジ」の場面より引用)

 

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小説版仮面ライダー斬月の感想

仮面ライダー鎧武を見てた人には、是非とも事前情報抜きで読んでほしいので、今回はなるべくネタバレ少なめで行きます。

未視聴やにわかの人でも多分楽しめるはず………。

 

感想を先に述べると、「求めたモノが概ね出されて、ほぼ期待通りのカタルシスが得られる後日談の続き」です。

ここからネタバレ注意。

 

 

 

 

 

 

トルキアの子供達が幽閉されている描写に生々しい部分があったり、貴虎が登場時から重傷とはいえ紘汰の介入でカチドキアームズに変身してもかなり厳しい、と見所もちゃんとあります。

著者はテレビ版のジオウ等も担当された毛利氏ですが、こちらは物語が短めなのもあってかちゃんと話が纏まってます。まあ、ジオウは本人役呼べないとか抜きに、製作側が混乱していたのか疑いたくなる状態だったので、比較にならないかもしれませんが。

テレビ版のメイン脚本担当の虚淵(うろぶち)氏※の名はありませんでしたが、その代わりか同じニトロプラスの人が監修を担っていたようです。

※最近の有名どころだと、まどマギ等。話逸れますが、著者は違うものの「巴マミの平凡な日常」ってアニメ化されないんですかね?個人的には本編がアレ過ぎて、ハッピーエンドルートの外伝であるこちらは、三十路弄りしつこい以外は好印象寄り。

閑話休題。

気になった点を挙げるなら、最低で下衆な元凶の癖に鎮宮鍵臣(かぎおみ)が呆気な過ぎたところですかね。

無慈悲な言い方ですが、折角人の心のない怪人同然のワルなら、インベス化されてプロトブラーボとプロトグリドン(使うならパイモンかグシオンあたり?)にぶつけるくらいの処理で良かった気はします。正直プロトブラーボとかの活躍ももっと見たかったです。

鍵臣に限らず作中世界の貴族自体が、ショッカー関連や財団エックス等以上にろくでもない存在と暗喩するような描写(テレビ版銀河鉄道の胸糞回みたく、娯楽として子供を殺し合わせる他)が挟まるので、「スーパーヒーロー戦記」で本郷猛(1号)が言ったように戦い続けなければいけないのかもしれません。流石に今回のプロトタイプは欠陥品なので、描写はないものの貴虎が処分済みかと思われますが。

だからこそ、本編で何度も聞いたはずの最後のあの言葉は、やれ仮面ライダーらしさとかどうこう抜きにひたすらカッコよく響くのでしょう。

 

それこそ、現実の世界にも(?)

やさぐれ少女の厄Ψ/別の異世界より

 

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そろそろトランスフォーマーより斉Ψの二次創作の数が上回るかも?

完全に小説版のネタの二番、三番煎じですがゆるして。

所謂if(イフ)ルートものですが、途中から原作最終回後か小説版の楠雄が来ます。

追記:「海藤」が「海堂」になってたので修正。

原作:斉木楠雄のΨ難


 

 僕は斉木楠子。超能力者だ。

 一般人が超能力と聞いて考えつく能力の大半は使える。ただし、常に発動し続けたり制約があるものが多く、使い勝手が良い訳でもない。

 たとえば、念話(テレパシー)。こちらはゲルマニウム製の物に触れない限り、自力で解除するのが不可能。そのため、常に半径二百メートルの他人の思考が勝手に頭に流れてくる。幼少からずっとこのまま、今では慣れたが煩わしいのは変わらない。

 たとえば、未来予知。こちらは自分の意思では発動できず、突発的な頭痛と共に一瞬だけ未来が見えるだけ。僕に不利益な悪い内容しか予知されないため、基本は回避するため奔走するしかない。

 他にもまだまだあるが、このように一長一短、ピーキーな能力ばかり。便利な機能と思ったら大間違いだ。

 超能力より、極端な「ギフテッド」と言えばこの気持ちも伝わるだろうか。

 僕としては、生まれつき全てを奪われたような感覚だ。二、三日で人類を滅ぼせる程の力を与えられたのは事実だが、代わりに苦労して何かを成した時の達成感も、サプライズで素直に驚く事も出来ない。

 それでも僕はなるべく普通の女子高生を装っている。地毛の色はマゼンタピンクだったのを黒く染め、眼鏡やサングラスも予備含めいくつかある。おっと、一人称も普段は「私」なのも補足しとく。

 髪にはジョイスティックみたいな制御装置があるが、こちらはマインドコントロール(対象が世界規模かつ逆の現象は起こせない)によりヘアピンとして通している。僕以外にも、似たヘアピンをした人がたまに歩いているのはそのためだ。

「お、相棒。今日はラーメン食いに行かねーのか」

「別に毎日じゃなくても良いだろ。何回言わせるんだよ。またな、斉木!町に不穏な風を感じるぞ……」

『うん、じゃあね』

 下校中に出会ったのはガタイとアゴの目立つ燃堂と、所謂中二病で運動が苦手の海藤。この二人はいつも僕に絡むクラスメイトだ。

 前者はおつむが、後者は普段の言動がぶっ飛びすぎて絡んで欲しくないが、変に拒むと逆に怪しまれそうなので、こんな風に黙認している。今じゃコイツらの仲間だと思われているが。

 それでも平穏な人生も悪くない………とは思う。

 幼稚園の頃、催しで行われた全員参加のじゃんけん大会で無敗を貫いた結果、地元の羽織りゴ__マスメディアに目をつけられる羽目になったしな。

 この事態を収めるのに手こずった経験もあって、人前で力は極力使わないようにしている。超能力に依存するのも良くないし。

(楠子当ての手紙?珍しいな)

 父さんの声だ。丁度同じ時間帯に帰宅したらしい。

「おかえり楠子。お前宛ての手紙だってさ」

『ただいま……これ送ったの海堂だよ』

 ひとまず父さんと僕は家に入りドアを閉めてから、「漆黒の翼より」と書かれた封筒を開けた。

 僕は内容を確認し、すぐに顔をしかめた。長ったらしいので手紙の内容を要約すると、凄まじき「ダークリユニオンキラー」の仔細を少しでも知っているなら共有してくれ、だそうだ。

 うん、これは処分しよう。

「えっ、捨てちゃうの?」

『だって、海藤が変にカッコつけたがるの鬱陶しいし……』

 父さんとの他愛ない会話は、リビングにいた母さんの悲鳴で掻き消された。

「くーちゃん!ゴキブリよ!ゴキブリ!」

 またか。この前、家に棲み着いたのは卵ごと全て消したはずだけど。

 以前下水管の中を辿ってやって来た時もあったので、今回もそうなのだろう。

 僕はそんな推測をしながら、サイコキネシスでゴキブリを微塵切りにしてゴミ箱に入れた。

 実は素手でも似たような真似は可能だが、親が心配するので基本念力かスプレーでやっている。

「ありがとね、くーちゃん」

 このくらいの駆除なら燃堂でもやれるけどね。彼、ゴキブリも素手で潰せるし。

「いやいや、サルモネラ菌とかを甘く見ない方がいい。職場の人の身内が、遊び半分でゴキブリを食べて胃腸が壊れたなんて話も聞くからね」

 そりゃ東南アジアの食用の物ならまだしも、家に湧くゴキブリはダメでしょ。ってか食べるつもりなの?

 ふと机に置かれたままの新聞に視線が行く。

 『才虎財閥の跡取り息子が亡くなりしばらく経つ』、という当たり障りのない記事だ。………別に気にしてない。

 こんな感じで日々を過ごしている。変わらない日常ってやつかな。

 


 

 僕は斉木楠雄。超能力者だ。

 そして、突然この世界に召喚された。

 僕は以前、別の時間軸に迷い込んだ経験はあるが、どうやらあの時とは勝手が違う。

 明らかに誰かに呼ばれている気がするのだ。少なくとも今目の前にいるこの世界の兄(空助)かは微妙だが。

「ごめんね。混乱してるとこ悪いけど、妹に見られる訳にもいかないでしょ。えーと、名前は男だから『クスオ』かな?」

 そう。現在僕はこいつの研究室の中にいる。なぜ才虎財閥の紋章があるのかも疑問だが、触れないでおこう。

 壁に張られた写真には、空助の隣に僕を女体化、黒髪にした風貌の女子高生が写されていた。

 この空助曰く、この世界での僕に当たる妹こと斉木楠子に、新たな超能力が発現して僕をこの世界に呼び寄せたらしい。

「おそらく、別世界の自分を招く力だ。『バースコール』、とでも名付けようか。この能力が生まれた理由は何となく想像はつくよ」

 何だ、心当たりがあるのか?

「ああ。推測だけど、妹は別世界の自分が手を貸してくれるのを願っている」

 別世界の僕が?

 おかしな話だとこの時は思った。斉木楠子について聞かされるまでは。

「妹はさ、その、激しくて苛烈なんだよね。例えば、楠雄。君は虫に耐性ある?」

 ……無い。

 小さすぎて思考が読めないし、イモムシどころか男子の好きであろうクワガタも無理だ。最悪失神する。

「妹は驚きはすれどそこまでビビらないどころか、ゴキブリとかならすぐ始末する。やばそうな外来種も同じくね」

 そりゃ凄いな。彼女の将来の就職先に、害虫や害獣の駆除業者も入っていそうだ。

 そんな考え事がつい口から零れた。

「あ、楠子の夢は、柔道や護身術とかの先生だよ。学校の体育教師も気になってるみたい」

 ……性別と髪の色だけでなく、精神面も僕とだいぶ異なるのは理解した。

 だがそれと何の関係がある、と思っていたのを予想してか、空助は棚の中から一冊のファイルを取り出しあるページを見せた。中に入っていたのは新聞の切り抜きだ。

「御割(おわり)山の大噴火は知ってるよね?」

 ああ、僕が数年がかりでようやく解決した大災害だからな。こちらの空助と協力してだが。

「楠子はループを起こさず解決したよ。噴火した溶岩を、犯罪組織等に転移させるって強硬手段でね」

 そう。記事に書かれていたのは、突如飛来した溶岩に根城ごとやられた犯罪組織についてだ。

 まいったな。どうやら彼女は予想以上に苛烈らしい。

「才虎財閥の坊っちゃんも容赦なく手にかけてたよ。照橋心美だけでなく、家族や他の住民まで巻き込んだ迷惑野郎だから、ってね」

 ここでは才虎芽斗吏が死んでいるだと?しかもこの世界の僕に殺された?

 当時の記事を調べると彼の死因は事故死。確かに僕なら、自然に亡くなったように見せかけ処すのは造作もないが……。 

 あいつは燃堂や海藤、窪谷須との交流で多少マシにはなったが、思い返せばあの時の才虎は権力を振りかざす専横なボンボンだ。

 ましてや、僕や海藤の家族にも迷惑をかけた(判明してるだけでも、コネを乱用してシベリア送り未遂)なら、何かの気まぐれでプッツンと切れてしまっても不思議じゃない。話を聞く限り、彼女はその手合いはすぐ消したがる程嫌いらしいな。

「あ、もしかして妹に会うの?」

 ああ。そもそも呼んだのは向こうだろ。

 ここまで僕と解離した経緯も本人から聞きたい。

「止めはしないけど、気を付けてね。自分が相手でも加減してくれるか微妙だから」

 

 そんな訳で、現在近所を散歩している斉木楠子に接触した。

 瞬間移動で本人から少し離れた後方に姿を見せる。

 周りは普通の住宅街。下手に超能力で攻撃すれば、近隣への被害は免れない。

 だが、彼女はそんなの構わないと言いたげな反応だった。

「!何か用?私と勝負したいの?」

 驚くのも無理はないが、違う。

 確認したいんだ。君が本当に心まで怪物になっていないか。どうして敵愾心(てきがいしん)を剥き出しにするのか。

「アンタ、まさか………私と同じならわかるでしょ」

 予備動作無しで四方八方から石ころが飛んで来た。常人でなくとも死ぬかもしれない速度だ。僕なら全てかわせるが。

 おっと、何か呪いをかけたな。こちらもすぐに解除した。

 呪いの直後の凍結攻撃も、発火能力(パイロキネシス)を使って対応する。

 死角から再度小石が、そして発電能力(ヴォルトキネシス)による稲妻が襲って来るがこれも回避。

 超能力による攻撃は、僅かだが僕より洗練されているようだ。制御装置込みでも出だしから僕より早い。

「そりゃあ、兄貴と制御の実験してるし」

 仲が良さそうで何よりだ。

「もういいかな?んじゃ」

 僕に要があるのは君じゃないのか?

 少なくとも僕を招いたのは君の力のようだが。

「ああ、そゆことね。確かに私も、超能力が暴発して変な二次作用とか起きるけど……」

 本当は僕に助力、もしくは君の現状を知って欲しかったんじゃないのか?

 僕の疑問に彼女は顔を曇らせつつも素直に答えてくれた。

「……そう、かもね。私は大抵のクズ共なら消せるし、他の人の迷惑を考えなければ好きに生きていける。………でもね、やっぱどこか虚しいし、その、寂しい」

 そうだろう。こっちの若干綺麗な兄からも粗方事情は聞いている。

「待って。君の兄貴、もしかしてかなーり性格悪い?」

 ああ。宅配物に爆弾を仕掛ける時もある。照橋さんを面と向かって侮辱したり、祖父母を改造しようとしたり、原作本編最終回で父さんに無茶させようとした凶行も忘れてないからな。

 ぼんやりとしたイメージになるが、僕へのテレパシーでその時の光景を確認できるか?

「………うん、これは素直にブチギレて良いと思う。私ならその場でミンチ以上にバラして燃やす。何か復活しそうだし」

 だそうだ。おい、良かったな、忌まわしきこっちの空助。お前が召喚されていたら、二度と戻れず死んでいただろう。

「ねぇ、そっちの話ももっと聞かせてよ」

 「場所を変えよう」と微笑む彼女は、少なくとも僕の目には別世界の自分ではなく、年相応の少女に見えた。おそらく、こちらが本来の斉木楠子なのだろう。

 

数十分後、近くの公園のベンチにて。

「アハハハハッ!!結局『おっふ』って言ってるじゃん!」

 あれはある意味不可抗力みたいな状況だ。

 何の話か分からない人は、原作の照橋さんがイメチェンした回を見てくれ。

 で、そっちは言ったのか?

「うん、心美と同じベッドで寝てた時にね。あ、六神には内緒で」

 おっふ…………。どんな状況だよ。六神通こと照橋信(厄介な実兄)が聞いたら憤死かショック死するぞ。

「陽衣(ひーちゃん)の家に泊まる日もあるんだよ。学校なら、佐藤くんもいてくれると不運がもっとマシになるけどね」

 こちらの鈴宮陽衣は何と同じクラスに転校していた。才虎がいなくなったのも影響していそうだな。おまけに、わざわざ彼女の家に泊まりに行く程の仲とは。

「そうでもしないと、あの子も安心できないんだよ。この前なんか、コケたひーちゃんを私が某バスター技の体勢で受け止めちゃったんだよ?勿論謝ったけど」

(でも、あの時のひーちゃんは良い反応だったなー)

 僕は既に照橋さんにそういう目で見られているんだ。おかげで苦労が絶えない。

 ……おい待て、最後の話はどうしてそうなった。

「えぇー?心美ならいいじゃん、こっそり付き合って結婚しちゃいなよ。あの子にお似合いなのウチらくらいっしょ」

 …………黙秘しておく。

「……にしても、あの才虎まで絆されるのはにわかに信じられないな」

 そう言えば、この世界だと彼を手にかけたそうだな。

 いや、別に変に咎める気も通報するつもりもないが。

「思えば、御割山の噴火あたりから、生殺与奪を考えるようになったっけ……。米良さんの父親を狙ってた連中も、何名かうっかり潰し_」

 突然言葉を切る彼女の反応から、まさかと思い自分の体を見ると、少しずつだが薄れていた。

 すまない。こちらもまだ知りたい情報はあるが、どうやらあまり時間が残っていないようだ。

「また、呼んでもいいかな?呼び出す際にそっちの状況とか知れないけどさ」

 まあ、燃堂や照橋さんに付きまとわれている時なら悪くないが、程々にな。

 僕が渋々了承していると、彼女の携帯電話が着信が。

「ありがと。ん、兄貴?…楠雄、何かお願いあるって」

 

 僕は急いで空助の研究室に瞬間移動で戻った。

 空助は楠子と通話を終えた直後のようだ。

「それじゃそろそろ切るね。あっ、やっぱり時間制限あるじゃん」

 そうだ。もうじき元の世界に帰るのだろう。で、僕にどうしろと。

 空助が何か書ける紙はあるかと尋ねるので、たまたま自室に置き忘れていたメモ帳をポケットから取り出し渡す。

 この世界の物体を持ち運べる保障はないため、なるべく元いた世界の媒体を使いたいらしい。

 十分程で何かを走り書きしたメモ帳が僕に返される。

「向こうの斉木空助にこれを見せて欲しい。要件はそれだけ。ありがとね、楠雄。久々に妹の喜ぶ顔が見れたよ」

 僕の知る空助らしからぬ純粋な笑顔だった。

 消える前に手紙の内容をチラ見する。最後の文はある意味予想通りだった。

 

 

 戻った、のか?

 気がつけば、転移前と同じくいつもと変わらぬ自室に立っていた。

 テレパシーで珍しく空助が自宅にいるのを確認する。場所はリビングだ。

 僕はすぐに向かった。

「ん?楠雄、そのメモは?」

 ある人からお前に渡してくれと頼まれたばかりなんだ。

 これで用は済んだな。

「あ、ちょ、急にどうしたんだ……」

 怪訝な顔のまま、空助はメモに目を通す。

 最初は疑っていたが、すぐ別世界の自分からだと納得したようだ。

 あのメモには向こうの世界との違いがざっくりだが書かれていた。そして最後にこう締めくくられていた。

『せめて身内だけでも大切にしろよ』

終

 


 

黒髪の斉木楠子(さいきくすこ)

この世界の「斉木楠雄」に該当する少女。

苛烈な面が目立つ、人を殺めるのに躊躇いがない、虫がそこまで苦手でもない(引きはするがゴキブリもすぐ処せる)、過去に飛べない、楠雄より感情表現豊か、見た目もなるべく地味に寄せる、好物が果物と和食等が、原作の楠雄との相違点。

そのため、空助含め彼女の正体を知る人からΨ人(サイじん)どころか魔女、上位者呼ばわりされたりも。船酔いが苦手なのは変わらず。

将来の夢は柔術や護身術の教師。理由は、賢く健やかな人を少しでも増やすため。一応教師側も応援している。

佐藤や照橋から恋愛感情(後者は男の姿の方にだが、楠子にも満更でもない)を向けられ困惑。何なら鈴宮と窪谷須からの好意も感じている。

多分将来は窪谷須と籍を入れる(?)

 

バースコール(多分本作オリジナル能力)

過去や未来ではない別世界の自分を召喚する能力。何年も蟠(わだかま)りを抱え続ける楠子に呼応するように、突如発現した。勿論、原作時空の楠雄は使えない。が、どうも平行世界への移動自体はできるらしい(?)。

召喚された者は一時間しか使い手の世界に留まれないが、原作の時間遡行と違って異なる世界の自分同士が出会っても対消滅しない。

バースはそのまま「ユニバース」から。

 

この世界の斉木空助

表向きは才虎財閥お抱えの科学者だが、実質的な代表の立場。

原作時空の空助と違って家族思いの面が強くなっており、楠雄曰く「若干綺麗な兄」。

妹が平然と誰かを傷付けるようになったのは自分にも非があると感じている。ただ、兄と妹としての仲自体は悪くないし、むしろ原作より良い……のかも。

楠雄の帰り際、原作世界の空助に向けて忠告の手紙を渡すよう頼んだ。

「気ままなのは羨ましく思うけど、何かあってからじゃ遅いからね。少なくとも僕は本気で悔やんでる」

 

黒楠子の話や触れなかった登場人物の掘り下げは、もしかしたら別でやるかもしれない

「もしも自分の部屋に闇の泉ができたら」(デルタルーンネタ)

雑記だけど、何か考えたら面白そうかもと殴り書きのメモだけしとく

 

主役級とラム枠=いつから持ってるかも思い出せない古い御守りたち他

サポーター=私生活で使う鞄、思いついた事をバラバラに書き留めたノート、掃除道具、ゴミ箱(クズーを前向きにした感じ?)

「チャプター4虐殺ルートのクリスに近いブチギレ方するとか、マジで何があった?」って言う子は多分いる。粗方事情は把握してるけど確認のために。

ヌイ、テナの枠も上記の誰か。

よく使うハサミとかの文房具は、原作のパレッタ程露骨に酷な真似はしないが「アンタをいたぶる輩も連れてきなよ。すぐ骸にするから」って、さらっと言いそう。

辞書全般のダークナーは、ダークナーやライトナーに関わらず堕落、悪辣と見なした存在に厳しく当たりそう。

トランスフォーマーとかは自室には置いてなかったはず。ダークナー化しても映画か初代寄りの性格だと思う。

 

ルールノー枠=本ブログ(?)かギャラリーアプリ。原作もスパムメールやタスクマネージャーの子がいるくらいだし。

 

市民=裁縫道具、団扇、帽子、手袋など防寒具(一部サポート役)、空っぽのファイル、まだそこまで読んでない本他

妖とかの図鑑は自分たちに、付喪神(ダークナー)って洒落た言い方求めそう。

あまり読んでない本は、各々差はあれどもっと読めって催促してきそう。

 

世界観=現実世界の環境と大昔の世界の一部が継ぎ接ぎの領域。たまに屋台や幼少の時に描いた絵がある。

 

中ボス=花札?かオセロ、学生時代の教科書?

 

隠しボス(性格が正義の鉄槌寄りなの限定)=比較的新しく持っている御守りか、飾った絵

ゴミ拾い大会にΨ挑戦

 

 

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前回のムキ橋さん↑

原作:斉木楠雄のΨ難


 

 僕らの住む左脇腹町には、ゴミ拾い大会なる恒例行事が存在する。

 内容は至って単純。拾ったゴミの種類ごとにポイントが決められ、一番ポイントを得た者、団体が優勝。優勝者には賞金として百万円が与えられる。

 聞けば、今回は才虎財閥が賞金を用意したそうだ。おそらく芽斗吏か、その父親による気紛れか遊び半分だろうな。

 この優勝賞金は、あくまで地域清掃の参加者を増やすための口実なのだろうが、前回の大会の五味(ごみ)やブルーム遣い然り、どうしてもゴミ拾いに似つかわしくない連中が多く集まってしまう。

 そもそも前回の大会は、なぜか高得点扱いのツチノコの死骸を拾った家族が優勝した、なんてふざけた結果で終わった。おっと、この町には本物のツチノコが実在するか否かは、この際突っ込まないでいただきたい。

 集合場所も前と同じ川原だ。だが今回から規則が一部変わるらしい。

「今回からは、ツチノコの死骸のポイントは粗大ゴミと同じになります」

 むしろ前回の扱いは何だったんだ。まさか本当に出るのは想定外でした、とかじゃないよな。

 ここまで言っておいて、なぜまたこんな催しに加わるのか、疑問に思った人もいるだろう。

 理由を率直に言うと、今朝起きた直後に予知でこの大会に何かしら混乱が起きる未来が見えたからだ。直接の原因となる部分までは確認しきれなかったのもあり、未然に防ぐにはこの方法が確実だろう。やれやれ、全く面倒である。

 念のため、ここに来る前に確認してもらった相卜からは、「少なくとも最悪な結果にはならないってさ」とのお墨付きを貰ったが……。

 前回は海堂がいたが欠員、その代わりか今度は梨歩田がいる。どうも灰呂が誘ったらしい。燃堂は変わらず……ん?何かそわそわしてるな。

「なあ、小力(こりき)二号の隠れ家になりそうなゴミなら、持って帰ってもいいか?」

「ダメだよ、ゴミの持ち帰りもルール違反になる」

 そう言えば、こいつは普段の言動と挙動で忘れられがちだが、ハムスターの世話は人並み以上にこなせるんだったな。

(照橋先輩の分も頑張らなきゃ)

 ふむ。テレパシーで確認したところ、どうやら当初は照橋さんも誘おうとしたが、六神通(兄)が反対したため梨歩田に白羽の矢が立ち、今に至るようだ。

 僕としては嬉しい誤算だ。目立つ照橋さんが来るとこちらとしても困る。

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