色筆の記録

玩具・物好き

トランスフォーマー Orphan of KSI(KSIの遺子) 第三話(最終回)

 

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KSIの顛末を聞いたスティールが質問する。

「それで君等はどうやってここまで?」

「あー、これもちょっと複雑でね・・・」

 

KSIボス率いるスカベンジャーズが、今のような集まりになったのは、香港の戦いまで遡る。

ガルバトロン(転生したメガトロン)の指揮下と、オートボットの攻撃を逃れることに成功した個体が、次第に集まってゆき、その過程でロックダウンの元部下の一人も加わった。

シャドウレイダーというオレンジ色のトランスフォーマーである。

彼女の援護もあり、スカベンジャーズは死地を脱することができた。

 

香港を切り抜けた彼等は、隠れながら移動し続け日本に到着した。

その後も逃走生活は続いたが、この村に来てからは、落ち着いた時間を過ごしていた。

 

 

 

「そして今に至るってこと。」

KSIボスの話を聞きながら、スティールは黙々と着いて行く。

 

 「ここだよ。」

彼女は歩みを止める。

目の前には茂みが広がっていた。

 

「この中に隠しているのか?」

ティールの問いに彼女は頷くと、茂みの中へ入って行く。

彼もそのあとを追う。

 

しばらく進むと、迷彩模様のシートに覆われたものが見えた。

中には彼の乗っていた戦闘機がある。

機体を指してKSIボスが言う。

「今日はもう遅いし、本格的な修理は夜が明けてからね。休む場所はどこがいい?」

「野宿でもいい。なるべく、ここの者達に迷惑をかけたくないんだ。」

 

 

 

翌朝

ティールはワイバーンの姿で、車庫近くにある木の根元で寝ていた。

この土地の所有者は、トランスフォーマーの数少ない味方で、敷地内での寝泊まりを許可している。

スカベンジャーズも例外ではない。

 

「おーい。起きてくれ、銀騎士。」

一人の人間が寝巻姿で、就寝中のスティールに声をかける。

その声に、彼はロボットモードに変形しながら応答した。

「銀騎士とは私のことか?・・・なぜ人間がここにいる?」

 

「そりゃ、ここは実家の敷地だし・・・」

ティールが面食らったのも無理はない。

なぜなら現在の地球では、トランスフォーマーという種族自体が不法に滞在する厄介者・敵として見られており、世界規模でトランスフォーマーを排する動きが活発になっている。

キューバやとある英国貴族の土地のような一部を除く)

 

「ここが君の家なのは分かった。しかし、なぜ私を怖がらない?今、世界中の人間が、我々を排除しようとしているそうだが・・・」

 

ティールの最もな問いに、男性は答える。

「あ、そうか。銀騎士はこの村に来るの初めてだっけ。」

 

「スティールベイン。それが私の名だ。」

 

「すまない、スティールベイン。来客は久しぶりなんだ。支度して来るから、少し待っててくれ。」

 

男性が、小走りで家に戻ると同時に、KSIボスが来た。

「おはよう。彼に会ったようだね。」

 

「あの人間のことか?」

 

「うん。会社員だけど、精神病の療養も兼ねて帰省中なんだってさ。」

精神病という単語に、スティールは違和感を覚えた。

先程の青年は、そこまでやつれてはいなさそうだったが・・・。

 

その思いを察したのか、KSIボスが解説してくれた。

「ああ見えて繊細な性格なんだよ、彼。私達と最初に出会った時なんか、腰を抜かしていたからね。」

 

「そ、そうなのか・・・。ん?」

 

二人が話していると、スカベンジャーズ達がスティールの戦闘機を運んできた。

既に機体は修理されており、汚れは一つも確認できない程に洗浄されている。

 

「朝早くから、皆ありがとう。」

KSIボスが仲間に感謝の意を述べた。

 

「もう直ったのか」

ティールの質問に、彼女は答える。

「トゥーヘッド達に協力してもらったんだ。」

「どうも。」

トゥーヘッドと呼ばれた双頭の大柄なトランスフォーマーが、軽く会釈をした。

 

他には赤い蜂のような者や青い者、昨夜出会ったトラックスもいた。

 

「何度もすまない・・・」

 

「このくらい何てことはないさ。」

申し訳なさそうにするスティールに、オレンジ色のトランスフォーマー シャドウレイダーは余裕な態度を見せる。

 

「早く乗った方が良いんじゃないか?別に、この村に留まりたいっていうなら、それも構わないが。」

トラックスが言う。

 

「そうだな。もしかしたら、追手がここまで来るかもしれない。滞在したい気持ちもあるが、これ以上迷惑はかけたくないんだ。」

ティールは戦闘機に搭乗すると、スカベンジャーズに礼を述べた。

 

「本当にありがとう。この恩は忘れない。」

 

「これからどこ行くの?」

KSIボスが質問する。

 

「あなたの言っていた、ケイド・イェーガーという男を探そうと思う。」

 

「それは構わないけど、今の彼の居場所は分からないよ。アメリカで、市街地から離れた場所に隠居しているって噂は、聞いたことあるけど。」

シャドウレイダーが怪訝そうに口を開く。

 

「ああ、ボスから聞いたよ。それでも、場所が絞れるだけ幸運だ。後は虱潰しに探せばいい。」

その時、KSIボスが彼の所属について聞くのを忘れていたことを思い出す。

「そういえば、最後まであなたは、何者か教えてくれなかったね。あ、言いたくないならーー」

 

 

「私は誇り高きアイアコンの騎士、その一人だ。」

先程の青年が戻って来たのと同時に、スティールは機体を発進させた。

最初の目的地は、荒廃したシカゴだ。

 

 

 

エピローグ

どこかの森

緑色の小さなディセプティコン イゴールが、自作の六脚ドローンに付けた端末を操作している。

「仲間」に情報を送っているのだ。

その情報には、先程の見慣れない戦闘機も含まれる。

 

この小柄なディセプティコンは、今でもバリケード等仲間達へ、少しでも役立ちそうな情報を発信し続けているのだ。

 

「そろそろ、休憩したらどうです?」

インセクティコンの助言が聞こえてないのか、イゴールは黙々と作業を続けた。

この辺境の地で。

 

終(最後の騎士王へ)

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