原作:トランスフォーマー(実写シリーズ)
プロローグ
その犯罪者 彩堀光雄(あやほりみつお)は人気のない道で、恐怖で震えていた。
「取引相手」が、半グレやマフィア以上に危険な存在だと知っているからだ。
「他に言うことは?」
携帯電話の向こうからの声には、慈悲や許しは全く感じない。
彩堀「俺のせいじゃない!無能で勝手に逃げる向こうが悪いに決まっている!」
「そうやって警察や被害者にも、同じ言い訳をしていたんですか?」
いつの間にか、彼の肩に羽虫のようなトランスフォーマー インセクティコンがいた。同時に、背後の森から金属の腕が伸びてきた。
日本 宙石山(そらいしやま)
「さて、どうしよう・・・」
日本のとある里山の林の中、巨大な騎士が壊れた戦闘機を前に考え込んでいた。
不時着した衝撃か、どこか故障したようだ。
「まだ真夜中だから、誰にも見られていないはず。近くに家や車の明かりも見当たらないからな。・・・だが、早めにこれをどこかへ隠した方が良さそうだ。」
ガーディアンナイツと呼ばれる騎士型のトランスフォーマーの一人である。
彼はある「宝」を持つため、それを狙うディセプティコンとクインテッサ達から逃げているところだった。
スティールはワイバーンに変形すると同時に飛翔し、近くに隠れることのできる場所が無いか確認する。
すると、百メートル程先にぼんやりだが、大きな岩のような物体が見えた。それ以外は、山林が広がるのみである。
「仕方ない。あそこに行こう。」
彼はワイバーンの姿のまま、機体を後ろ足で掴み持ち上げると、大急ぎで岩のようなものへと向かう。
「助かった。この機体を隠せるくらいには大きな岩だ。」
「あんた、ここで何してんだ?」
「?!」
スティールは驚いた拍子に機体を落としてしまう。
「お、大丈夫か?」
「ああ、そんなに高く飛んでないからな。今向かう。」
騎士の姿に変形した彼を見て、黒いトランスフォーマー KSIトラックス(以下トラックス)は少し驚く。
「騎士型のトランスフォーマーだったのか。」
「驚かせて申し訳ない。少々厄介なことになってしまってね・・・」
「俺はトラックス。良ければ訳を聞かせてくれ。」
彼はこれまでの経緯を話した。
無論、相手が見ず知らずの者ということもあり、自分の立場や所属している組織の名は伏せてある。
「事情は分かった。だが、詳しいことは俺達の拠点で話そう。機体のことは仲間に頼んでおく。」
「感謝する。」
「あと、その岩は磐座(いわくら)と言ってな、人間達の信仰対象らしい。下手に触れない方がいいぞ。」
スティールがもう一度岩を調べると、確かに宗教的な形をした紙と縄が巻かれていた。一般的に注連縄(ちゅうれんなわ)・紙垂(しで)と呼ばれるものである。
トラックスの体が粒子状になると、徐々に車へと変わる。
スティールは(変わった変形の仕方だな・・・)
と思いながらも変形する。
「なるべく低く飛んでくれよ。」
言うと同時に彼は発進する。行く最中、彼は拠点にいる仲間へ連絡を送った。
続く